1.まえがき
1.1 現象と研究動機
オールケーシング工法は、ケーシングチューブを掘削孔全長にわたり揺動(回転)・押込みながらケーシングチューブ内の土砂をハンマーグラブにて掘削・排土することで掘削し、所定の深さの地盤に達したら孔底処理を行い、鉄筋かごを建込み後、トレミーによりコンクリートを打込み、コンクリート打込みに伴いケーシングチューブおよびトレミーを引抜き回収を行う工法である。
オールケーシング工法による場所打ち杭では、杭施工の段階で周辺からの土圧が設計予測値よりも高くなると、ケーシングの引き抜き時に杭断面がケーシング径よりも小さくなり、杭断面の欠損が発生する.特に杭頭付近の断面ではこの“ほそり”が残存すると、強震時の水平保有耐力にも影響するので、施工段階でいち早く発見し、補修を施す必要がある.本研究はこれに対処するための非破壊試験を活用する.

1.2 研究目的
現場打ち杭の断面の出来形状態を、その杭頭付近の断面の細りを検出する非破壊検査手法を開発する.つまり、場所打ち杭の施工後、ふーチング部の床浚えして杭頭を露出させた状態において衝撃波実験を実施する.衝撃波は杭体に入射され,杭体を伝播し,健全な杭体では同先端部においての反射波が発生するのみであるが,断面欠損あるいは拡幅断面が存在すると,これらの箇所からも反射波が発生する.したがって基礎杭の出来形状態を波形の分析から推定することが可能である.これにより場所打ち杭の施工健全度の向上に役立てる.
1.3 研究手法
本提案では,非破壊試験の一つ,弾性波を用いた杭体の健全性評価試験法(Integrity Test)を採る.場所打ち杭を施工後、基礎(フーチング)底面を床浚えした時点において、杭の突出部を、杭軸、つまり鉛直方向に、さらには杭軸直角、つまり水平方向にインパルス・ハンマーで衝撃を与え、これによる表面波の発生と伝播性状を杭体のコンクリート被り部で計測する.この波形分析を利用して表面の凹凸を検知し,杭体の断面欠損の箇所を特定する.申請者は同様な現象のコンピュータ解析を過去において実施し、土木学会等で論文発表をしている.そして具体的に上記実験手法の適用限界,その解析システムの妥当性を検証する.(スライド参照).
杭体の主鉄筋の外側のコンクリート被り厚さは、5cm程度である.この部分に鉛直方向に伝わる表面波あるいは境界波の発生と伝播に注目する.波長 は伝播速度 と振動数 の比で定義される.つまり、 .インパルスの卓越振動数を上記の被り厚の程度の波長とする.硬化途中のコンクリート媒体の物性値(密度 、圧縮は速度を3,000 m/s、せん弾性係数を1,000 m/sとして、衝撃波の卓越振動数を20kHzと設定すると、それぞれの波長は15cm, 5cmとなる.したがって、振幅の大きなせん断波を利用して、衝撃はとして要求される振動数は20~30kHzを使用する.
杭体への入力波は,杭体を伝播していくが,この途中で断面の変化,物性変化があると,その断面で発生する反射波が検知される.もちろん杭先端まで達する場合は,そこでの反射波が検知さるはずである(スライド参照).以上のように、断面のインピーダンス変化を捉えるための弾性波の利用は、一般に非破壊試験の範疇に入る.反射波をみるには、高感度の小型加速度計を使用する.
現場計測波から断面インピーダンスの変化を容易にかつ正確に読み取るためには、あらかじめ、コンピュータ・シミュレーションからいくつかの代表的な断面変化のパターンに対して検討をしておく.コンピュータ・シミュレーションには,申請者が開発済みの3次元有限要素法に基づく解析ソフトA3DFEMを一部変更して使用する.(スライド参照).これにより、杭体の施工性の概略を推定するための予備的なコンピュータ実験を実施する.これらを参照にして、杭頭における反射波の様相を逆解析することで杭体の断面変化を推定する.
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